“CYCLIP”は、地面に立っている2本の棒の隙間にタイヤを挟ませて(clipして)、まるで自転車が自分で立っているような状態で駐輪することができるスタンドです。
歩道のガードポールや照明灯等の機能を兼ねることで、街中に溶け込むように設置することができます。
自転車移動がもつ自由さ、楽しさ、シンプルさを保ちながら、いかに歩行者や車と共存する環境をつくっていけるか、ということがテーマになっています。
浅野 千幸 審査員
私自身自転車には乗らないので、感覚的に選びました。単純にいいなと思うものは、シンプルな引き算でデザインされ色々な場面でされ適合すると考えており「CYCLIP」は、みごとに計算されている作品と思いました。
渡会 悦義 審査員
今回の作品は、街を見て考えたものとプロダクト視点で捉えてものが明確であったと思います。その中で「CYCLIP」は自然に風景に溶け込み、普通に存在しているような気さえします。タイヤの汎用性なども考慮し、ものづくりに携わるの者として大変嬉しい作品でした。
千葉 学 審査員長
最優秀賞の神津好英さんの案は、三角形の断面を持つ鉄製の細い柱が2本立ち、そこに自転車のタイヤを挟むという、実にシンプルなアイデアから生まれた駐輪ラックである。タイヤを挟むというアイデア自体は、決して目新しいものではない。実際タイヤの弾力性を利用して、車止めのガードレールなどに挟んで自転車を停めた経験を持つ人も多くいることと思う。ただ、神津さんのアイデアは、こうした単純な原理が実に洗練され、しかもそれがたった2本の小さな柱にまで昇華されている点で、他の案を圧倒していたように思う。V字形に開いた隙間は、どんな太さのタイヤにでも対応できる融通性を持つし、鉄という素材の適度な「しなり」は、自転車をしっかりと支えることに役立っている。こうした様々な自転車にも対応できる機能性を備えながらも、それがシンプルな形態によって生み出されていることは、意表をつくほどであった。何も洗練やミニマルが目指す方向であると言いたいわけではない。しかしこの単純な2本の柱は、もしかしたらガードレールやバリカーなど、僕たちが都市空間で日常的に目にするたくさんの「もの」にも応用できそうなポテンシャルも秘めているし、街をもう少しだけ美しくしてくれるのではないかという期待感も抱かせてくれる。二次審査では、友人の鉄工所にお願いして作ったというモックアップも用意して臨んでくれたが、すぐにでも商品化できそうなくらいのその完成度も特筆ものであった。街中のガードレールやバリカーがふと気づくと自転車を停めることができるラックにもなっている、そんなささやかな発見の悦びも含め、最優秀に相応しいものであった。